法定研修と処遇改善加算の研修は何が違う? 1本の年間計画にまとめる方法

「法定研修の計画」と「処遇改善加算の研修計画」を別々に作っている。そんな事業所は少なくありません。担当者が違ったり、提出先が違ったりするうちに、いつのまにか2つの計画が並走している。しかし実際に研修を受けるのは同じ職員で、実施する日も同じです。今回は、この2つがどう違い、どこまで1本にまとめられるのかを整理します。

目的が違う:「守るため」の研修と「育てるため」の研修

まず、性格の違いをはっきりさせておきます。

法定研修は、運営基準(指定基準)で実施が義務づけられている研修です。虐待の防止、身体拘束等の適正化、感染症の予防およびまん延の防止、業務継続計画(BCP)などが代表的で、多くは委員会の設置や訓練の実施とセットになっています。目的は、利用者の安全と権利を守り、事業を継続できる状態を保つこと。つまり「守るため」の研修です。実施しない場合は減算の対象になる項目もあります。

一方、処遇改善加算のキャリアパス要件Ⅱで求められる研修は、職員の資質向上のためのものです。事業所として職員にどう育ってほしいかという目標を定め、その目標に沿って研修機会や技術指導を提供したり、資格取得を支援したりする。目的は職員が成長し、定着すること。つまり「育てるため」の研修です。

この違いを押さえておくと、次のことが見えてきます。法定研修を10本実施したという事実だけを並べても、キャリアパス要件Ⅱの説明としては足りません。逆に、資質向上のための研修をどれだけ充実させても、法定研修が抜けていれば運営基準違反になります。両方が必要なのです。

それでも、1本の年間計画にまとめられる

目的は違いますが、実施の場面では同じ職員が、同じ年度のなかで受けるものです。したがって年間計画としては1本にまとめられますし、まとめたほうが実務は確実に楽になります。

組み立て方はシンプルです。

  1. 法定研修を先に月へ割り付ける:義務であり時期の制約もあるため、これを先に埋めます。年間カレンダーの骨格ができます。
  2. 資質向上の目標を言葉にする:新人・中堅・リーダーなど、階層ごとに「今年度どうなってほしいか」を書きます。
  3. 目標に対応する研修を、空いている月に足す:介護技術、接遇、認知症ケア、記録の書き方、外部研修への派遣など。
  4. 1本の表にまとめ、周知する:どの研修が法定でどれが資質向上なのかを列で区別しておけば、1枚の表のまま両方の説明に使えます。

法定研修の側にも、資質向上の意味は当然あります。虐待防止研修は権利擁護の専門性を高める研修でもありますし、感染症対策の研修は現場の実務力そのものです。同じ研修が2つの目的を兼ねること自体は、何も問題ありません。大切なのは、計画のうえで「これは義務の研修」「これは目標に紐づく研修」と区別が付く形になっていることです。

別々に管理すると、二重管理になり抜けが出る

2つの計画を別々に持つと、次のような困りごとが起きます。

  • 同じ研修を2つの計画に別々に書き、実施記録も2か所に転記することになる
  • 片方の計画だけ更新され、もう片方が前年度のまま残る
  • 受講者名簿が計画ごとに分かれ、「この職員は結局どれを受けたのか」が一覧で見えない
  • 提出時期が違うため、担当者が変わったときに片方の存在が引き継がれない

とくに事業所数や職員数が増えると、この転記の手間が急に重くなります。そして手間が重くなるほど、更新が後回しになり、実態と書類がずれていきます。運営指導で困るのは、たいていこのずれです。

年間計画を1本にしておけば、更新する対象はひとつだけです。受講記録も1か所に集まるので、「◯◯さんが今年度受けた研修」を職員単位で並べられます。この職員単位の一覧は、キャリアパス要件Ⅱの説明にも、個別研修計画の実施記録としても使えます。

介護保険でも障害福祉でも、構造は同じ

介護保険と障害福祉のどちらの事業所でも、この構造は変わりません。運営基準に基づく義務研修があり、処遇改善加算のキャリアパス要件に基づく資質向上の研修がある。名称が「介護職員等処遇改善加算」と「福祉・介護職員等処遇改善加算」で異なり、法定研修の実施回数や訓練の要否がサービス種別ごとに違うだけです。

そのため、介護保険と障害福祉の両方を運営している法人でも、計画の作り方は共通の型で進められます。事業所ごとにサービス種別に応じた義務研修の本数を確認し、そこに法人としての資質向上の目標を重ねる。この型を法人全体で揃えておくと、事業所間で書式がばらつかず、管理者が異動しても引き継ぎが効きます。

なお、法定研修の実施回数や加算の要件・様式は、制度改正や自治体の運用によって異なります。実際の計画作成にあたっては、最新の告示・通知および保険者・自治体への確認が前提です。

まとめ

法定研修は「守るため」、加算の研修は「育てるため」。目的は違いますが、実施する相手も時期も同じである以上、年間計画は1本にまとめられます。法定研修で骨格を作り、資質向上の目標に紐づく研修を足していく。この順番で組めば、義務の抜けを防ぎながら、加算の説明にも使える計画がひとつの表で完成します。二重管理をやめることが、そのまま抜け漏れ対策になります。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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