虐待防止委員会の回し方|開催して終わりにせず周知記録まで残す

委員会は開いているのに、記録が議事録だけで止まっていませんか

虐待防止委員会を毎月、あるいは決められた頻度で開催している事業所は多いと思います。管理者と主任、相談員が集まって、ヒヤリハットの共有や指針の確認をして、議事録を作って終わり。ここまではきちんとやっているのに、いざ実地指導や運営指導で「委員会の内容を職員全員に周知した記録はありますか」と聞かれると、答えに詰まる場面が少なくありません。

委員会を開催すること自体は難しくありません。難しいのは、そこで決まった内容を現場の職員一人ひとりに届け、届いたことを記録として残すところです。開催の記録と周知の記録は別物だという前提が抜けていると、いくら委員会を回していても「仕組みとして機能している」という証明にはなりません。

指定権者が見たいのは、委員会が形だけ存在しているかどうかではなく、そこでの気づきが現場の対応にどう反映されたかです。委員会と周知の記録をセットで管理する組み立てを、今回は整理してみます。

委員会で扱う議題を型にしておく

委員会の議題が毎回ばらばらだと、記録も散らかりやすくなります。あらかじめ議題の型を決めておくと、進行も記録も安定します。

  • 前回の委員会で決めた対応の進捗確認
  • 虐待の疑いやヒヤリハットの報告(事案がない月も「なし」を記録する)
  • 身体拘束や不適切ケアに関する現場からの相談事項
  • 指針や研修計画の見直しが必要かどうかの確認
  • 次回までに周知する内容の確定

特に最後の「次回までに周知する内容の確定」を議題に入れておくことが、次のステップにつながります。委員会で決めたことを「誰が」「いつまでに」「どの方法で」周知するのかを、その場で決めてしまうと、後回しになりにくくなります。

議事録には、出席者、議題、決定事項、周知担当者と周知期限を必ず入れます。決定事項だけを書いて満足してしまうと、後から見返したときに「結局誰が伝えたのか」がわからなくなります。

周知したことをどう証明するか

委員会の決定を伝える方法は、朝礼での口頭伝達、掲示、回覧、ミーティングでの説明など事業所によってさまざまです。どの方法を選んでも構いませんが、共通して必要なのは「誰が読んだか、聞いたか」を残すことです。

紙の回覧板であれば、確認印やサインを入れる欄を用意します。掲示であれば、いつからいつまで掲示したかを記録し、可能であれば読んだ職員のチェックリストを添えます。口頭で伝えた場合は、伝えた日時と対象者、伝えた内容の要点をメモとして残しておくと安心です。

ここで悩ましいのが、非常勤職員やシフトの都合で委員会当日にも朝礼にも参加できない職員への周知です。こうした職員には、後日改めて内容を伝える機会を設ける、あるいは自分のペースで読んで確認できる資料を渡すといった工夫が必要になります。

弊社が提供している福ひろばラーニングは、読むかたちのeラーニングで、7分程度で読み終わるコースを職員が自分の空いた時間に受講できます。委員会の決定事項をコースの一部として組み込んでおけば、誰がいつ受講したかがシステム上に記録として残るため、非常勤職員への周知漏れを防ぎたい場合の選択肢のひとつになります。紙の運用と組み合わせて使っている事業所もあります。

教育担当が仕組みとして回すためのポイント

委員会の開催と周知を仕組みとして定着させるには、教育担当者が「誰が何をいつまでにやるか」を一覧で管理できる状態にしておくことが役立ちます。委員会の開催日、議題、決定事項、周知担当者、周知完了日、周知方法、確認できた職員数といった項目を一枚の表にまとめておくと、月をまたいでも抜け漏れに気づきやすくなります。

また、委員会自体の実施頻度や記録の様式については、サービス種別や自治体によって求められる内容が異なるため、詳細は指定権者にご確認いただくのが確実です。運営規程や指針にすでに定めている場合は、その内容と実際の運用がずれていないかを、年に一度は見直すとよいと思います。

周知の記録を残す作業は地味で、後回しにされがちです。ただ、この記録があるかないかで、委員会が「開いているだけ」なのか「機能している」のかの見え方が大きく変わります。教育担当者の役割は、委員会そのものを回すことよりも、その後の周知と記録の抜け漏れをなくす仕組みを作ることにあると考えます。

まとめ

虐待防止委員会は、開催すること自体よりも、決定事項を職員全員に周知し、その記録を残すところまでが本体です。議題を型にし、周知担当と期限をその場で決め、誰が確認したかをチェックできる形で残しておくことで、委員会が実際に機能している証明になります。非常勤職員への周知には、読むかたちのeラーニングのような手段を組み合わせるのも一つの方法です。

出典・参考

▶ 高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果(厚生労働省)

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

▶ WAM NET(福祉・保健・医療の総合情報サイト)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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