身体拘束適正化の委員会と記録、拘束ゼロの事業所こそ見落とす3点

「うちは拘束していないから」で止まっていませんか

運営指導の準備をしていて、身体拘束適正化の委員会議事録を探したら、ここ半年ほど開催した形跡がなかった。そんな経験はないでしょうか。理由を聞くと「うちは車椅子のベルトも使っていないし、そもそも拘束するような場面がないから」という答えが返ってくることがあります。

たしかに、身体的な拘束具を使う場面がない事業所は少なくありません。通所介護や訪問系のサービスでは、施設に入所している方に比べて拘束が発生しにくいのは事実です。しかし、身体拘束等の適正化のための委員会・指針・研修は、拘束の有無にかかわらず整備しておくことが求められています。実際に拘束をしていないことと、委員会や記録の仕組みが機能していることは、別の話です。

拘束の実績がないと「該当なし」で済ませてしまいがちですが、そこにこそ抜けやすいポイントが3つあります。

拘束ゼロの事業所が抜けやすい3点

1つ目は、委員会そのものの形骸化です。開催記録はあっても、議題が「今期も該当事案なし」の一行で終わっているケースがあります。委員会で本来確認すべきなのは、拘束の有無だけでなく、日々のケアの中でヒヤリハットにつながりそうな場面がなかったか、職員間で判断に迷った対応がなかったか、といった振り返りです。該当事案がないことを確認したうえで、次に何を注意するかを話し合っているかどうかで、記録の中身は大きく変わります。

2つ目は、身体拘束の定義を狭く捉えてしまうことです。ベルトや車椅子の固定具を使っていなければ拘束はしていない、と考えがちですが、身体拘束には言葉によって行動を制限する、いわゆるスピーチロックも含まれます。「ちょっと待ってて」「動かないで」といった声かけを、職員が悪気なく日常的に使っていることは珍しくありません。委員会で拘束の有無を確認する際に、身体的な拘束具の話だけで終わってしまうと、こうした言葉による制限が議題に上がらないまま見過ごされます。

3つ目は、研修の対象を実務上必要な人だけに限定してしまうことです。「うちは拘束していないから、研修は簡単に済ませていい」という判断は、要件を満たしているとは言えません。身体拘束等の適正化のための研修は、拘束の実績があるかどうかにかかわらず、全職員を対象に年1回以上実施し、その記録を残すことが求められます。非常勤や新しく入った職員が対象から漏れていないか、実施記録に参加者の氏名や理解度の確認が残っているかも、拘束の有無とは関係なく確認しておく必要があります。

記録として残すべきポイント

これら3点に共通するのは、「該当なし」であることの確認プロセスを記録に残しているかどうかです。委員会で拘束の有無を確認しただけで終わらせず、どのような視点で確認したのか、スピーチロックのような言葉の制限についても話し合ったのか、議事録に書き残しておくと、後から振り返ったときにも委員会が機能していたことが分かります。

研修についても同様です。実施日、対象者、内容、理解度の確認方法まで記録に残しておくことで、拘束の実績がない事業所であっても、適正化に向けた取り組みを続けていることを示せます。研修内容を毎回一から作るのが負担であれば、既存の教材を活用する方法もあります。福ひろばラーニングには身体拘束をテーマにした7分で読み終わるコースがあり、スピーチロックの具体例や委員会での確認ポイントも含まれているため、研修の下敷きとして使うと準備の手間を減らせます。受講後に理解度を確認する仕組みも用意されているので、記録として残す際の裏付けにもなります。

大切なのは、教材を使うこと自体ではなく、それをきっかけに職員間で「うちの現場ではどうか」を話し合い、その内容を記録に残すことです。委員会の議事録や研修記録は、拘束の実績がない事業所ほど、取り組みの継続を示す唯一の証拠になります。

まとめ

身体拘束をしていないことは、委員会や研修が機能している証明にはなりません。議事録の中身の薄さ、スピーチロックのような言葉の制限の見落とし、研修対象の限定化という3点は、拘束ゼロの事業所ほど抜けやすくなります。委員会での確認プロセスと研修の実施記録を、拘束の有無にかかわらず丁寧に残しておくことが、運営指導の場でも自事業所のケアの質を示す材料になります。

出典・参考

▶ 高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果(厚生労働省)

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

▶ WAM NET(福祉・保健・医療の総合情報サイト)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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