BCPの机上訓練、1回2時間で進める手順と記録に残す項目

BCPは作ったが、訓練は止まったまま

事業継続計画は策定済み、年度初めの職員会議でも配布した。ここまでは多くの事業所で済んでいるのではないでしょうか。ところが「訓練」となると、シフトの都合や日程調整の難しさもあり、後回しになりがちです。特に机上訓練は「何をどう進めればいいのか分からない」という声をよく聞きます。実地訓練のように動く必要がない分、逆に進行表がないと間延びしてしまい、結局雑談で終わってしまうこともあります。

机上訓練は特別な設備も広い会場もいりません。必要なのは、進行のたたき台と、終わったあとに何を記録として残すかという2点だけです。今回はこの2つに絞ってお伝えします。

1回2時間で組み立てる進め方

机上訓練は2時間あれば十分に成立します。長すぎると集中力が続かず、短すぎると討議が深まりません。目安として次のような時間配分で組んでみてください。

最初の10分は、目的とルールの確認にあてます。今日の訓練で何を確認したいのか、批判や評価の場ではなく気づきを出す場であることを伝えておくと、発言が出やすくなります。

次の30分ほどで、想定シナリオを提示します。地震で通所が休止になった、感染症のクラスターが発生した、断水で衛生管理ができないなど、事業所の立地や利用者層に合わせて一つ選びます。あれもこれも詰め込まず、1回の訓練につき1シナリオに絞る方が討議が具体的になります。

続く50分は、グループに分かれて初動対応を確認する時間です。「誰が第一報を受けるか」「誰が利用者・家族へ連絡するか」「代替サービス提供の判断は誰がするか」といった役割分担を、実際の職員名で当てはめていきます。ここでBCPに書かれている内容と、現場の実感にずれがないかを見ておくと、後の見直しにつながります。

その後20分で各グループの発表と共有を行い、残り10分を振り返りにあてます。決まったこと、決まらなかったこと、次回までに確認しておくべきことをその場で整理しておくと、記録係の負担も減ります。

このタイムテーブルは固定の正解ではありません。参加人数やサービス種別によって調整して構いませんが、シナリオを1つに絞ることと、最後に振り返りの時間を確保することは崩さない方がよいと感じています。

記録に残す項目

机上訓練は実施しただけでは記録として弱く、運営指導などで問われた際に「いつ、何を、どこまで確認したか」を示せるようにしておく必要があります。最低限、次の項目は残しておきたいところです。

まず基本情報として、実施日時、参加者の氏名と職種、使用したBCPのどの部分を確認したかを記載します。次に、当日設定したシナリオの内容です。「地震想定」だけでなく、「震度いくつを想定し、通所を休止した場合の対応を検討した」など、少し具体的に書いておくと後で振り返りやすくなります。

討議の要点も残しておきます。誰が発言したかまで細かく書く必要はありませんが、「連絡担当を誰にするかで意見が分かれ、最終的にサービス提供責任者に一本化することとした」のように、決まった内容とその理由を書いておくと、次回の訓練や実際の発動時に参照できます。

最後に、課題として残った点と、次回までの対応事項、担当者を明記します。ここが抜けていると、訓練をやりっぱなしにしてしまい、次の訓練でも同じ課題が繰り返し出てくることになります。

訓練を次につなげるための準備

机上訓練の質を上げる方法の一つに、事前学習があります。当日いきなりBCPの中身を読み合わせから始めると、それだけで30分近く消費してしまい、討議の時間が削られてしまいます。参加者が事前に基本事項を頭に入れておくと、討議に多くの時間を使えます。

弊社が提供している福ひろばラーニングは、7分で読み終わるコースを中心にした読むかたちのeラーニングです。BCPの基本や訓練の進め方に関するコースを、訓練の数日前に各自受講しておいてもらうと、当日の説明時間を短縮できます。研修受講の記録も残る仕組みなので、訓練実施記録とあわせて研修履歴として管理しておくと、後から振り返る際にも役立ちます。

まとめ

BCPの机上訓練は、2時間という限られた時間の中でシナリオを1つに絞り、役割分担を具体的な職員名で確認することがポイントです。記録は日時・参加者・シナリオ・討議の要点・次回への課題を最低限残しておけば、運営指導の際にも実施状況を示せます。訓練をやりっぱなしにせず、次回に課題を引き継ぐ仕組みを作っておくことが、いざというときの動きにつながります。

出典・参考

▶ 介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修資料・動画(厚生労働省)

▶ ひな形(例示入り)を活用したBCP(業務継続計画)の作り方(厚生労働省)

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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