複数事業所の研修管理|拠点ごとの実施状況を本部はどう把握するか

拠点ごとに研修の進み方が違うのは珍しくない

複数の事業所を運営している法人で、本部から見ると「A事業所は年間計画どおり進んでいるのに、B事業所は半分も終わっていない」という状態になっていることがあります。理由を聞くと、B事業所の管理者は現場の人員配置に追われていて、研修の日程調整まで手が回っていなかったというケースが多いです。

これは管理者の力量の問題というより、拠点ごとに研修を「誰が」「いつ」進めるかの仕組みが本部側で共有されていないことが根本にあります。年間研修計画そのものは法人全体で立てていても、実際に受講が進むかどうかは各拠点の管理者の裁量に任されている、という法人は少なくありません。

本部としては、実地指導や監査の場面で「事業所ごとの実施状況」を聞かれたときに、拠点に電話して確認しないと答えられない状態は避けたいところです。特に処遇改善加算の要件に研修計画と実施記録が関わってくる法人では、拠点ごとの遅れがそのまま加算要件の未達成につながるリスクもあります。

ばらつきが生まれる3つの原因

拠点間の差を見ていくと、原因はだいたい共通しています。

まず、非常勤・パート職員の出勤日が拠点によって異なり、全員がそろう日を作りにくいことです。常勤中心の拠点は集合研修を組みやすい一方、非常勤比率が高い拠点は計画どおりに進まないまま年度末を迎えがちです。

次に、管理者ごとに研修に対する優先順位が違うことです。人員不足で目の前の業務に追われている拠点ほど、研修は後回しになりやすくなります。これは管理者を責めても解決しません。本部が進捗を定期的に見える形にしていないことのほうが問題です。

そして、記録の残し方が拠点ごとにバラバラなことです。ある拠点はExcelで管理し、別の拠点は紙の受講記録を綴じているだけ、という状態では、本部が全体像をつかもうとしても集計に時間がかかります。

本部が把握するための仕組みづくり

まず有効なのは、拠点ごとの実施状況を月1回程度、共通のフォーマットで報告してもらう仕組みです。「誰が」「何を」「いつ受講したか」を一覧化できる形にしておけば、本部側で全拠点を横並びで確認できます。細かい進捗管理を毎週求める必要はなく、月次か四半期に一度の頻度でも、遅れている拠点を早めに見つけることができます。

次に、遅れが出ている拠点には、理由を聞く前に「あと何をやれば追いつくか」を一緒に確認することです。非常勤職員の出勤日が合わないことが原因であれば、集合形式にこだわらず、各自のタイミングで進められる研修に切り替えるという選択肢もあります。当社では、7分で読み終わるコースを福ひろばラーニングとして提供しており、出勤日がバラバラな職員でも、休憩時間や勤務の合間に少しずつ受講を進められます。受講記録も個人ごとに残るため、拠点の管理者が集計しなくても、本部側で誰がどこまで進んでいるかを確認しやすくなります。

もうひとつ大事なのは、記録のフォーマットを法人全体で統一しておくことです。受講日、対象者、テーマ、確認者を同じ項目で残すようにしておけば、拠点によって管理方法が違っていても、本部が突き合わせるときに迷いません。実地指導や監査で研修記録の提出を求められた際にも、拠点ごとにバラバラな様式を集めて整える手間がなくなります。

遅れている拠点への関わり方

進捗が遅れている拠点に対して、本部が一方的に「早く進めてください」と伝えるだけでは、現場の負担感が増すだけで解決しません。なぜ進んでいないのかを聞き、人員配置の問題であれば応援体制を検討する、非常勤の出勤日が合わないのであれば個別受講に切り替える、といったように、原因に応じた対応を一緒に考える姿勢が必要です。

また、進んでいる拠点のやり方を他拠点に共有することも効果があります。ある拠点が朝礼前の10分間を受講時間に充てているなら、その方法をそのまま他拠点に伝えるだけで、進み方が変わることもあります。本部は監視役ではなく、拠点間の情報をつなぐ役割として動くほうが、現場も協力しやすくなります。

サービス種別や自治体によって研修の実施回数や記録の要件が異なる部分もあるため、加算要件に関わる研修については、指定権者への確認も忘れないようにしてください。

まとめ

複数事業所の研修管理は、拠点ごとの裁量に任せきりにすると、いつの間にか大きな差が生まれます。共通フォーマットでの月次報告、記録様式の統一、遅れている拠点への具体的な支援という3つを組み合わせることで、本部は電話をかけて確認しなくても全体の状況をつかめるようになります。まずは月1回、全拠点の進捗を並べて見る時間を作ることから始めてみてください。

出典・参考

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

▶ WAM NET(福祉・保健・医療の総合情報サイト)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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