身体拘束ゼロの事業所こそ危ない、委員会と記録が抜ける3つの盲点

「うちは拘束をしていないから」という油断

通所介護や訪問リハビリの現場では、身体拘束そのものを行う場面がほとんどない、という事業所も多いと思います。実際に拘束をしていないのは、支援の質として評価されるべきことです。ただ、身体拘束適正化のための委員会や研修は、拘束の有無にかかわらず、開催と実施が求められている取り組みです。

管理者や教育担当の立場からすると、「実際に拘束していないのに、なぜ毎回委員会を開いて記録を残さないといけないのか」と感じることもあるかもしれません。ですが運営指導の場では、委員会が形式的に開かれているか、記録として何を残しているかが確認されます。拘束の実績がないことと、委員会・記録の整備状況は、まったく別の評価軸として見られます。

拘束をしていない事業所ほど、この「別の軸」への意識が薄れやすく、結果として記録の抜けにつながりやすい、というのが今回お伝えしたい点です。

委員会と記録で抜けやすい3つの点

1つ目は、拘束の実績がない月に委員会そのものを省略してしまうことです。「今月は該当事例がないから会議は不要」と判断して、委員会の開催記録が飛び飛びになっているケースを見かけます。委員会は事例検討の場であると同時に、拘束を発生させないための予防的な話し合いの場でもあります。実績がない月でも、ヒヤリハットの内容や、今後起こりうる場面を想定した話し合いを行い、その記録を残しておく必要があります。

2つ目は、研修の内容が「拘束の定義や要件を確認しただけ」で終わっていることです。拘束をしたことがない職員ばかりだと、研修も一般的な知識の確認にとどまりやすく、自分たちの現場で実際に起こりうる場面と結びつかないまま終わってしまいます。たとえば送迎中の車内での見守り、入浴介助中の一時的な制止など、拘束にあたるかどうか判断に迷う具体的な場面を委員会で話し合い、それを研修の題材として使う、という流れがつながっていないと、記録上は「実施した」となっていても、内容が薄いことが伝わってしまいます。

3つ目は、委員会の議事録が「拘束なし」という結果だけを記載して終わっていることです。運営指導では、委員会が何を検討したのか、その検討がどう研修や現場の対応に反映されたのかという流れが確認されます。結果だけを書いた議事録では、委員会が実質的に機能しているかどうかが伝わりません。検討した内容、出た意見、次回までの課題といった経過が記録として残っているかどうかが問われます。

記録として残すときに意識したいこと

これら3点に共通しているのは、「拘束をしていない」という結果だけでなく、そこに至る過程を記録に残すという視点です。委員会の開催記録には、参加者、検討した議題、出た意見、決定事項を、たとえ結論が「特に変更なし」であっても具体的に書いておくことをおすすめします。研修記録についても、実施日や参加者だけでなく、どのような場面を題材にしたか、参加者からどんな質問や意見が出たかを一言添えておくと、後から振り返ったときに研修の質が判断しやすくなります。

研修の準備にかける時間が限られている事業所では、身体拘束の基本的な知識を確認する部分を、7分で読み終わるコースのようなかたちで先に済ませておき、委員会や集合研修の時間は自分たちの現場に即した検討に充てる、という分け方も一つの方法です。福ひろばラーニングは読むかたちのeラーニングなので、受講の記録が自動的に残る点も、研修記録の管理という面では扱いやすいところです。基礎知識の受講と、委員会での事例検討を分けて考えると、記録の作り方も整理しやすくなります。

また、記録を担当者一人に任せきりにせず、委員会のメンバーで議事録の内容を確認し合う仕組みを作っておくと、後から見返したときに「誰が読んでも経過が分かる記録」になりやすいです。担当者が異動や退職で変わっても、記録の書き方が引き継がれるようにしておくことも、長い目で見ると大事な点です。

まとめ

身体拘束をしていない事業所こそ、委員会の開催、研修の中身、議事録の書き方という3点が形骸化しやすいという傾向があります。実績がない月の委員会運営、現場の具体的な場面を題材にした研修、経過が分かる議事録の作成という3点を意識するだけで、記録としての説得力は大きく変わります。拘束をしていないという事実は、日々の記録の積み重ねがあって初めて評価につながるものだと考えています。

出典・参考

▶ 高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果(厚生労働省)

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

▶ WAM NET(福祉・保健・医療の総合情報サイト)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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