運営指導で問われる研修記録、「実施した」だけでは通らない理由

研修はやっているのに、なぜ指摘されるのか

運営指導が終わったあと、「ちゃんと研修はやっていたのに、記録が足りないと言われた」という声を聞くことがあります。年間計画も立てていた、講師も呼んだ、職員も集まった。事業所としては「やった」という実感があるのに、確認者からは「実施したことが確認できない」と指摘される。ここには、現場の感覚と確認者が見ているものの間にずれがあります。

このずれの正体は、「実施した」という事実と「実施を証明できる」という状態が、実は別物だということです。研修を開いたこと自体は事実かもしれません。しかし確認者は、その場にいなかった人です。記録だけを見て、何が行われたかを判断します。記憶や実感は確認の材料になりません。紙やデータとして残っているものだけが、確認の対象になります。

「実施した」と「実施を証明できる」の違い

「実施した」は、現場にいた人の記憶の中にある事実です。「実施を証明できる」は、第三者が記録だけを見て、いつ・誰が・何を・どのように学んだかを追える状態のことです。この二つの間には、記録の作り方という橋が必要です。

証明できる記録に共通する要素は、おおむね次のようなものです。

実施日時と場所、対象とした職員の範囲、使用した教材や資料の名称、講師または進行役、参加者の氏名と署名またはそれに代わる記録、内容の要約、そして理解度を確認した方法です。このうち一つでも欠けると、「本当にその研修が行われたのか」「誰が受けたのか」を確認者が追えなくなります。

よくあるのは、出席簿はあるのに内容の記録がない、あるいは内容の記録はあるのに個人の受講履歴がひもづいていないというケースです。出席簿だけでは、何を学んだかが分かりません。内容の記録だけでは、誰が受けたかが分かりません。どちらも単独では証明として弱く、両方がそろって初めて「実施を証明できる」状態になります。

加算の要件になっている研修や、虐待防止・身体拘束適正化・感染対策のように毎年の実施が求められているものは、特にこの証明の精度が問われやすい項目です。要件の詳細はサービス種別や自治体によって異なるため、指定権者への確認は欠かせませんが、「記録として残す項目」という点では、上に挙げた要素を押さえておくと大きく外すことは少ないはずです。

非常勤・中途入職者も含めて証明できる仕組み

もう一つ見落とされやすいのが、研修を受けた人と受けていない人の線引きです。常勤職員は定例の会議のあとに研修を組み込みやすい一方、非常勤やパートは出勤日がばらばらで、同じ場に集まること自体が難しい事業所も多いと思います。中途入職者も、入職時期によって年間計画の研修を受けられないまま年度が進んでしまうことがあります。

この場合、「対象者の誰が、いつまでに、何を受けたか」を一覧で追える状態にしておくことが、証明のしやすさに直結します。個別に声をかけて受けてもらった研修ほど、記録が散らばりやすく、あとから「この人は受けていたか」を確認するのに時間がかかります。

こうした背景もあって、研修を「読むかたちのeラーニング」で用意し、受講履歴をシステム側で記録として残すという方法を選ぶ事業所も増えています。福ひろばラーニングでは、7分で読み終わるコースを職員が自分のタイミングで受講でき、誰がいつ受けたかが履歴として残ります。集合研修が組みにくい非常勤職員にも届けやすく、出席簿と内容記録を別々に管理する手間も減らせます。すべてをこれで置き換える必要はなく、集合研修と組み合わせて「証明できる部分」を補う使い方が現実的だと思います。

まとめ

運営指導で問われるのは、研修をやったかどうかではなく、やったことを記録だけで追えるかどうかです。日時・対象者・内容・理解度確認がそろって初めて、実施は証明に変わります。非常勤や中途入職者を含めた全員の受講状況を一覧で把握できる仕組みを整えておくと、指摘される前に自分たちで気づける体制になります。

出典・参考

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

▶ WAM NET(福祉・保健・医療の総合情報サイト)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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