利用者さんの「困った行動」に理由がある—現場で働く私たちの見方
同じことを何度も聞かれる、急に大声を出される、食事や入浴の介助を強く拒否される。介護の現場にいると、こうした場面に一日何度も出くわします。忙しい時間帯にこういうことが重なると、「またか」「なんで今」と、つい思ってしまうこともあると思います。
こうした場面は、記録では「不穏」「拒否」「徘徊」といった言葉でまとめられることが多いですが、実際に対応しているのは私たち一人ひとりです。何度も同じ対応を求められると、疲れてしまうのも当然のことです。今回は、そういう場面をどう見るかについて、少し立ち止まって考えてみたいと思います。
「困った行動」という言葉の中にあるもの
「困った行動」という言い方は、対応する側から見た表現です。同じ場面を、利用者さん本人の側から見ると、まったく違う意味を持っていることがあります。
たとえば、何度も同じことを聞かれるとき。本人にしてみれば、聞いた記憶自体が残っていないだけで、毎回はじめて聞いているつもりかもしれません。急に大声を出すときも、本人には何か不快なことや不安なことが起きていて、それをうまく言葉にできないだけかもしれません。介助を拒否されるときも、「今は嫌だ」という理由がその人の中には存在していて、こちら側にそれが伝わっていないだけということもあります。
つまり「困った行動」というのは、対応する側の視点でつけた名前であって、本人にとっては困った行動ではなく、何かへの反応や表現である場合が多いということです。この見方に立つと、行動そのものを止めようとするより、その手前にある理由を探すほうが、対応の糸口が見つかりやすくなります。
行動の理由を探すときに見る場所
理由を探すといっても、毎回はっきりした答えが見つかるわけではありません。ただ、見る場所をいくつか決めておくと、探しやすくなります。
一つは身体の状態です。痛みや不快感、便秘、脱水、体調の変化などは、言葉で訴えられないと行動として表れることがあります。もう一つは環境です。音や光、人の多さ、時間帯、いつもと違う手順など、環境の変化が行動に影響していることもあります。そしてもう一つは、その人の生活歴や習慣です。長年の暮らし方の中で身についたペースやこだわりが、今の行動に関係していることもあります。
認知症のある方の場合は、記憶や理解の力が変化していることに加えて、不安や混乱が行動として表れやすくなります。これは行動・心理症状として説明されることが多く、認知症についての基本的な理解があると、行動そのものを問題として見るのではなく、その人が置かれている状況として見ることができるようになります。
こうした視点は、資格の勉強をしている中でも出てきます。介護福祉士の学習では、認知症の基礎知識や、行動・心理症状の考え方について触れる場面があります。福ひろばラーニングでは、読むかたちのコースに加えて、介護福祉士国家試験の一問一答も用意しています。1,000問の中から20問までは無料で確認できるので、認知症の理解を振り返るきっかけとして使ってみるのもよいかもしれません。
一人で抱えずに、見たことを共有する
理由を探す視点を持っていても、その場で毎回答えが見つかるわけではありません。忙しい業務の中で、じっくり考える時間が取れないことのほうが多いと思います。
そこで大事になるのが、気づいたことを記録に残し、周りの職員と共有することです。「この時間帯にこの行動が多い」「この人が近くにいるときは落ち着いている」といった小さな気づきは、一人で持っているだけではもったいない情報です。共有することで、他の職員が対応するときのヒントになりますし、複数の視点が合わさることで、理由がより見えやすくなることもあります。
また、理由を探す視点を持つこと自体が、自分の気持ちを守ることにもつながります。「困らせようとしている」という見方から、「何か理由があるはずだ」という見方に変わると、同じ場面でも受け止め方が変わってきます。これは対応の技術というよりも、現場で働く中で少しずつ身につく感覚のようなものだと思います。
資格取得を考えている方にとっても、この視点は学習内容と現場をつなぐ手がかりになります。テキストで学ぶ知識と、実際に目にする場面が結びつくと、覚えたことが記憶に残りやすくなります。7分で読み終わるコースのような短い学習を、休憩時間や勤務の合間に少しずつ受講していくことで、現場での気づきと知識が徐々につながっていくと思います。
まとめ
利用者さんの「困った行動」は、こちら側から見た呼び方であって、本人にとっては何かへの反応や表現であることが多いです。身体の状態、環境、生活歴、そして認知症による変化など、理由を探す視点を持つことで、対応の受け止め方が変わってきます。一人で抱え込まず、気づいたことを周りと共有しながら、少しずつ理解を積み重ねていくことが、現場で働く私たちにできることだと思います。
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