介護職員が家族対応で悩んだときに知っておきたい視点

面会のたびに言われることが違う、あの感じ

利用者さんのご家族と話していて、前回と今回で言っていることが違う、他のご家族と要望が食い違う、といった場面に戸惑った経験がある方は多いのではないでしょうか。

「母はもっと歩かせてほしい」と言う娘さんがいる一方で、「転んだら困るので座らせておいてほしい」と言う息子さんがいる。同じ利用者さんのご家族なのに、求めていることが正反対ということは珍しくありません。

現場で直接ご家族と接するのは、管理者よりも現場の職員であることのほうが多いと思います。だからこそ、板挟みになって疲れてしまう、何を基準に対応すればいいのか分からなくなる、ということが起きやすいのだと思います。

この記事では、そうした場面で自分の気持ちを少し軽くするための考え方を整理してみます。

家族にも「立場の違い」がある

ご家族の要望がばらばらに見えるとき、実はそれぞれに事情があることがほとんどです。

普段から頻繁に顔を出しているご家族と、遠方に住んでいてたまにしか来られないご家族とでは、見えている利用者さんの姿が違います。たまにしか会えない分、会ったときの印象が強く残り、「前より弱っている」と心配が大きくなることもあります。

また、介護を主に担ってきたご家族と、あまり関わってこなかったご家族とでは、罪悪感や責任感の重さも違います。急に意見を言い始めたご家族が、実はこれまで関われなかった分の気持ちを埋めようとしている、ということもあるかもしれません。

職員として対応に困ったときは、「誰が正しいか」ではなく、「それぞれどんな事情からその発言が出てきているのか」という視点で見てみると、少し冷静になれることがあります。これは正解を探す作業ではなく、状況を整理するための視点の一つです。

もちろん、全てのご家族の事情を職員が把握できるわけではありません。無理に理解しようとしすぎず、「事情があるのかもしれない」と一旦受け止めるだけでも、気持ちの負担は変わってきます。

制度の知識があると、説明がしやすくなる

家族対応で悩む場面の中には、サービスの仕組みや制度についての誤解から生まれているものも少なくありません。

たとえば、通所介護の利用回数を増やしたいというご家族の要望に対して、ケアプラン上の位置づけや利用者負担の仕組みを説明できると、感情的なやり取りになりにくくなります。逆に、曖昧な説明をしてしまうと、「ちゃんと答えてくれない」という不信感につながることもあります。

これは管理者だけが知っておけばいい知識ではなく、現場で直接ご家族と話す職員こそ、ある程度は理解しておきたい部分だと感じます。制度を正確に説明できるということは、それだけで安心材料になるからです。

介護福祉士の資格取得を考えている方であれば、国家試験の学習を通じて、介護保険制度や各種サービスの仕組みを体系的に学び直す機会にもなります。普段の業務の中で感覚的に理解していたことが、制度としてどう位置づけられているのかを知ると、家族への説明にも自信が持てるようになると思います。

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一人で抱え込まないための線引き

家族対応で悩んだときに、もう一つ意識しておきたいのが、「自分一人で判断しない」という線引きです。

現場で日々接しているのは職員ですが、サービスの方針や対応の最終判断は、本来チームや事業所として決めることです。ご家族から強く要望されたとき、その場で何かを約束してしまいたくなる気持ちは分かりますが、後で他の職員との対応に食い違いが出ると、かえって信頼を損なうことにもなりかねません。

「持ち帰って確認します」「担当者と相談してからお伝えします」といった返答は、決して逃げではなく、組織として一貫した対応をするために必要なプロセスです。これを自分の中で言い切れるようになると、板挟みの場面での精神的な負担はかなり軽くなります。

また、同じような悩みを他の職員も抱えていることは多いです。ミーティングや申し送りの場で、「こういう要望があって対応に困った」という話を共有しておくと、自分だけの問題ではなくなり、チームとしての対応の引き出しも増えていきます。

まとめ

家族対応で悩んだときは、要望の違いの背景にある事情を想像してみること、そして制度の知識を自分の言葉で説明できるようにしておくことが、気持ちを軽くする手がかりになります。一人で抱え込まず、チームで対応する前提を持つことも忘れないでください。日々の対応の積み重ねが、ご家族との信頼関係にもつながっていきます。

出典・参考

▶ 介護福祉士国家試験(社会福祉振興・試験センター)

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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