ヒヤリハット報告書を集めて終わりにしない、研修の題材に変える流れ

報告書は増えるのに、現場は変わらない

ヒヤリハット報告書のファイルが、棚にどんどん厚くなっていく。月末に件数を集計して、委員会に提出する。そこで止まっている事業所は少なくありません。

提出された報告書を読み返すと、似たような場面が繰り返し出てきます。移乗の際にバランスを崩しかけた、配膳の順番を間違えかけた、服薬の確認が一瞬遅れた。一件一件は小さな出来事でも、積み重ねると「この場面で起きやすい」という傾向が見えてきます。

ただ、傾向が見えていても、それを現場に戻す仕組みがなければ、同じことがまた起こります。報告書を書いた本人は一度注意を払うかもしれませんが、同じ場面に立ち会っていない職員には伝わりません。集めることと、活かすことの間には、もう一段階必要な作業があります。

集めるだけで終わる理由

なぜ多くの事業所で、ヒヤリハットが「集めて終わり」になるのでしょうか。理由はいくつか考えられます。

一つは、集計と共有が分かれていないことです。件数や傾向を数字で把握するところまでは委員会の仕事として定着していても、それを職員にどう伝えるかまで決まっていない事業所が多いです。

もう一つは、伝える手段が朝礼や掲示に限られていることです。朝礼で読み上げても、その場にいない非常勤職員には届きません。掲示板に貼っても、忙しい時間帯には目を通す余裕がないまま終わってしまいます。

さらに、報告書の文面が事実の羅列にとどまり、なぜその場面が危ないのか、どう対応すればよかったのかという考察が含まれていないことも関係します。事実だけを並べた報告書は、次に活かす材料としては弱くなります。これは以前の記事でも触れましたが、ヒヤリハットは責める記録ではなく、次を防ぐために書く記録です。その前提が共有されていないと、書く側も当たり障りのない内容にとどめがちになり、研修の題材としては使いにくいものになります。

題材に変える具体的な流れ

ヒヤリハットを研修の題材に変える手順は、それほど複雑ではありません。まず、委員会やリーダー層で報告書を定期的に見直し、頻度の高い場面や、重大事故につながりかねなかった事例をいくつか選びます。選ぶ際は、個人を特定できる情報を省き、場面と対応に焦点を当てます。

次に、選んだ事例を「何が起きたか」「なぜ起きたか」「どう対応すればよかったか」の三段階で整理します。この整理をする過程で、担当者自身の理解も深まります。教える立場に立つと、自分の理解の穴に気づくことがあるという話は、別の記事でも書いた通りです。ヒヤリハットの整理も同じで、文章にまとめる作業そのものが学びになります。

整理ができたら、短いコースとして受講できる形にします。朝礼で一度読み上げるだけでなく、出勤日がばらばらの非常勤職員にも、自分の都合のよい時間に目を通してもらえる形にしておくと、伝わり方が変わります。福ひろばラーニングは読むかたちのeラーニングで、7分で読み終わるコースを作ることができます。委員会で整理した事例を、そのまま研修の題材として配信し、誰がいつ受講したかを記録に残せるので、集めた記録を眠らせずに次の研修へつなげやすくなります。

最後に、受講後の感想や気づきを簡単に集めておくと、次の委員会での議論の材料になります。報告書を出す側と、研修を受ける側が同じ内容でつながっていることが、集めて終わりにしないための鍵になります。

記録を次の研修サイクルに乗せる

ヒヤリハットを研修に変える流れは、一度作れば終わりではありません。事故の傾向は季節や利用者層の変化によって動きますし、新しい職員が加われば注意すべき場面も変わります。年間の研修計画の中に、ヒヤリハットから作った題材を組み込む枠をあらかじめ用意しておくと、委員会の作業が単発で終わらずに続けやすくなります。

また、記録の残し方も意識しておきたい点です。誰が整理し、誰が研修として配信し、誰が受講したかという流れが追えるようになっていると、運営指導で事故防止の取り組みを聞かれたときにも説明がしやすくなります。報告書そのものだけでなく、それがどう研修に変わったかまで示せると、取り組みの継続性が伝わります。

まとめ

ヒヤリハットは集めるだけでは事故防止につながりません。委員会で傾向を整理し、場面と対応を言葉にして、研修の題材として配信するところまでを一連の流れにしておくことが大切です。読むかたちの短いコースであれば、出勤日がばらばらな職員にも届けやすくなります。報告書を書く手間を、次の事故を防ぐ材料として活かす仕組みを、年間計画の中に組み込んでおきましょう。

出典・参考

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

▶ WAM NET(福祉・保健・医療の総合情報サイト)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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