新人に教える立場になったら。教えることで見えてくる自分の理解の穴

「教えて」と言われて初めて気づくこと

入職して数年経つと、新しく入ってきた職員の指導を任されることが増えてきます。「〇〇さん、新人さんに移乗のやり方教えてあげて」と声をかけられたとき、多くの人が最初に感じるのは「自分にできるだろうか」という不安ではないでしょうか。

毎日やっている業務なのに、いざ言葉で説明しようとすると詰まってしまう。手は動くのに、口が動かない。そんな経験をした方は少なくないと思います。これは指導力がないからではなく、体で覚えたことを言葉に変換する作業を、これまでしてこなかっただけのことです。

この「詰まる感覚」こそが、実は自分の理解を見直すきっかけになります。今回は、新人に教える立場になったときに起きることと、それが自分自身の学びにどうつながるかを考えてみます。

なぜ教えようとすると詰まるのか

介護の仕事は、体で覚える部分がとても多い仕事です。移乗の介助、食事の見守り、排泄のケア、どれも繰り返すうちに自然と体が動くようになります。ただ、体が覚えていることと、頭で理由を説明できることは、別の話です。

たとえば「なぜこの手の位置で支えるのか」「なぜこのタイミングで声をかけるのか」。普段は意識せずにやっていることでも、新人に聞かれると「なんとなく」としか答えられないことがあります。このとき初めて、自分がその動作の理由を本当には理解していなかったことに気づきます。

これは恥ずかしいことではなく、誰にでも起きることです。むしろ、こうした場面に出会うことは、自分の知識を点検する良い機会だと思います。新人からの「どうしてですか」という質問は、先輩を試しているわけではなく、素朴な疑問です。その素朴な疑問に答えようとする中で、自分の理解の曖昧な部分がはっきりしてきます。

説明する過程で理解が固まっていく

誰かに何かを説明するときは、まず自分の頭の中を整理する必要があります。バラバラに覚えていた知識や経験を、順序立てて、理由とセットにして伝えなければなりません。この整理の作業そのものが、自分の理解を深めることにつながります。

たとえば体位変換ひとつとっても、「なぜその順番で体を動かすのか」「なぜ声かけが先なのか」を説明しようとすると、自分がこれまで経験の中でなんとなく身につけてきたことを、根拠を持って言語化する必要が出てきます。このとき、介護の基礎知識として学んだはずのことと、現場での実践が、頭の中でつながっていく感覚があります。

介護福祉士の資格取得を考えている方にとっては、この作業はそのまま試験勉強にも生きてきます。試験では、日常業務では意識しない用語や根拠を問われることが多くあります。普段「体がやっていること」を「言葉で説明できること」に変えておくと、試験問題を読んだときにも実感を持って答えられるようになります。

実際、新人指導をきっかけに資格の勉強を始めたという話もよく聞きます。福ひろばラーニングには介護福祉士国家試験の一問一答が1,000問ほど用意されていて、最初の20問までは無料で試すことができます。指導の合間のすきま時間に、自分の理解をチェックする感覚で使ってみるのもひとつの方法です。詳しくは公式の案内をご確認ください。

教えることは一方通行ではない

新人指導というと、先輩が新人に一方的に教える場面を思い浮かべがちですが、実際にはそうとも限りません。新人が学校で学んできたばかりの知識や、最近の養成課程で教わっている考え方に触れることで、自分が現場の経験だけで固まっていた考え方を見直すきっかけになることもあります。

また、新人に教えることで、自分がどんな順序で物事を覚えてきたかを振り返る機会にもなります。最初につまずいたこと、時間がかかったこと、逆にすぐに理解できたこと。それらを思い出しながら伝え方を考えることで、自分自身の成長の過程を言語化できるようになります。

これは、介護福祉士の受験勉強にも通じるところがあります。試験勉強というと新しい知識を詰め込む作業のように感じるかもしれませんが、実際には自分がすでに現場で経験してきたことに、名前や理由をつけていく作業でもあります。新人への説明と試験勉強は、方向は違っても似たような頭の使い方をしていると言えます。

まとめ

新人に教える立場になると、自分が当たり前にやってきたことを言葉で説明する必要が出てきます。その過程でこそ、自分の理解の曖昧な部分がはっきりし、知識と経験がつながっていきます。教えることは新人のためだけでなく、自分自身の学び直しの機会でもあります。資格取得を考えている方にとっても、指導の経験は決して無駄にはならないはずです。

出典・参考

▶ 介護福祉士国家試験(社会福祉振興・試験センター)

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

※試験の日程・受験資格・出題範囲は年度によって変わります。必ず公式の案内をご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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