意思決定支援のガイドラインは何を示す?日々の場面での活かし方

毎日の活動プログラムを何にするか、外出先をどこにするか、グループホームでの夕食をどのメニューにするか。こうした小さな選択の場面で、本人の表情や反応をどこまで待てているでしょうか。時間に追われていると、支援者側で決めてしまい、本人には結果だけを伝えるという流れになりやすいのではないでしょうか。意思決定支援のガイドラインは、こうした日常の場面を念頭に置いて作られています。今回は、ガイドラインの考え方を事業所の日々の支援にどう落とし込むかを整理します。

意思決定支援ガイドラインが求めていること

意思決定支援のガイドラインは、本人の意思決定を代わりに行うことを目的としたものではありません。本人が自分で決められるように支援し、それでも難しい場合は本人の意思を推定し、それも困難な場合に限って本人の最善の利益を検討する、という順番を大切にしています。

この順番は、支援する側が「本人のために」と先回りして決めてしまう場面を見直すきっかけになります。例えば日中活動の内容を選ぶとき、本人に聞く前に支援者同士で決めてしまっていないか。グループホームでの外出や買い物の場面で、時間がかかるからと支援者が先に選択肢を絞り込んでいないか。ガイドラインは、こうした場面で立ち止まる視点を提供するものだと考えると、日々の支援と結びつけやすくなります。

意思決定支援は、意思形成支援・意思表明支援・意思実現支援という段階に分けて考えられています。本人が状況を理解し考えを持てるように情報を整理して伝える段階、本人が意思を表明しやすいように環境や関わり方を整える段階、表明された意思を実現するために周囲が調整する段階です。この3段階を意識すると、「本人の意思を確認しました」という記録だけでなく、どの段階でどんな工夫をしたのかを振り返りやすくなります。

支援会議や日々の場面でどう使うか

個別支援計画の作成やモニタリングの場面は、意思決定支援を具体的に実践する機会になります。計画を立てる際に、本人の希望をどう聞き取ったか、聞き取りにくい場合はどんな工夫をしたかを支援会議で共有することが、ガイドラインの考え方を実務に落とし込む第一歩です。

日々の支援の中では、選択肢の提示の仕方を見直すことから始められます。言葉での説明が難しい方には、写真や実物を見せる、選択肢を2つに絞って示す、いつもより時間をかけて反応を待つといった工夫が考えられます。こうした工夫は、サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者が現場の職員と一緒に考え、事業所内で共有していくものです。

強度行動障害のある方や、意思表示が読み取りにくい方への支援では、本人の意思を確認する手段そのものを支援チームで検討する必要があります。家族や相談支援専門員と情報を共有しながら、本人の過去の選択や反応の傾向を踏まえて意思を推定する作業は、一人の職員の判断に委ねるのではなく、チームで行うことがガイドラインでも重視されています。

記録に残すときの視点

意思決定支援を実践しても、記録に残らなければ振り返ることができません。記録には、本人がどう反応したか、支援者がどんな働きかけをしたか、その結果どう判断したかという一連の流れを残すことが大切です。「本人の意向を確認した」とだけ書くのではなく、確認のためにどんな方法を使ったのか、本人がどんな様子だったのかまで記録しておくと、次の支援会議やモニタリングで役立ちます。

運営指導でも、意思決定支援の取り組みは個別支援計画の作成プロセスや記録から確認されることがあります。日々の記録が形式的な一文で終わっていると、意思決定支援の考え方が実践されているかどうかが伝わりにくくなります。逆に、本人の反応や支援者の工夫が具体的に書かれていれば、事業所としての姿勢を示す材料にもなります。

こうした考え方を事業所内で共有する際、職員全員が同じ理解を持てているかを確認する機会も必要です。福ひろばラーニングには、意思決定支援の基本的な考え方を整理した、7分で読み終わるコースがあります。新任の職員や異動してきた職員が受講することで、ガイドラインの趣旨を一から説明する手間をかけずに、共通認識を作る助けになります。

まとめ

意思決定支援のガイドラインは、特別な手続きを増やすものではなく、日々の小さな選択の場面を見直すための考え方を示しています。本人が決める、それが難しければ推定する、それも難しければ最善の利益を検討するという順番を意識し、どんな工夫をしたかを記録に残すことが、事業所としての実践につながります。支援会議や記録の見直しから、無理なく始めてみてください。

出典・参考

▶ 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について(厚生労働省)

▶ 障害福祉サービス事業所等における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修動画(厚生労働省)

▶ 福祉・介護職員の処遇改善(障害福祉・厚生労働省)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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