ハラスメント対策の措置、研修と相談窓口を運営指導でどう見るか

相談窓口はあるのに、動いていない

事業所の掲示板や重要事項説明書に「相談窓口:管理者」と書いてあるのに、実際にそこへ相談が来たことがない。そんな状態の事業所は少なくありません。窓口があること自体は形式上満たしていても、職員がその存在を知らなかったり、相談しても何も変わらないと思われていたりすると、機能しているとは言えません。

ハラスメント対策は、就業規則に一文入れて終わりにできるものではなく、方針の周知、相談窓口の設置、研修の実施、相談があった場合の対応手順という一連の仕組みとして求められています。管理者や教育担当の立場からすると、「窓口はあるか」だけでなく「使われる窓口になっているか」を点検する必要があります。

措置として求められている内容を整理する

ハラスメント対策として事業所に求められる内容は、大きく分けると以下のようなものです。

  • 事業主の方針を明確にし、職員に周知すること
  • 相談窓口を設置し、誰が担当かを職員全員に伝えること
  • 相談があった場合の対応の流れを決めておくこと
  • 研修を実施し、ハラスメントとは何か、どう相談すればよいかを職員に伝えること
  • 相談したことで不利益な扱いを受けないことを明示すること

このうち研修は、内容そのものより「誰が、いつ、何を学んだか」を記録に残せているかが実務上のポイントになります。年に一度、全職員向けに実施するのが一般的ですが、非常勤やパートの職員も対象に含める必要があり、出勤日が揃わない事業所ほど実施の機会をどう作るかが課題になります。

窓口についても、担当者を決めるだけでなく、その担当者自身がどう対応すべきかを理解している必要があります。相談を受けた担当者が困ってしまい、結局管理者に丸投げになるケースもあるため、窓口担当者向けの研修や説明も合わせて考えておくと、実際に機能する仕組みに近づきます。

運営指導で見られる視点

運営指導では、ハラスメント対策について「規程があるか」だけでなく、「実施した記録があるか」を確認されることがあります。具体的には次のような点です。

  • 就業規則やハラスメント防止規程に、相談窓口や対応方針が明記されているか
  • 研修を実施した記録(実施日、対象者、内容の概要)が残っているか
  • 非常勤職員を含め、対象となる職員全員に周知できているか
  • 相談窓口の担当者が明確で、職員がその存在を知っているか

書類上は整っていても、実施記録が「実施した」という一文だけで、誰が対象だったか、どんな内容だったかが分からないと、確認が難しくなります。研修記録は、受講者の名前と受講日、内容の要旨が分かる形で残しておくのが基本です。

こうした研修は、集合形式で時間を確保するのが難しい事業所も多いと思います。福ひろばラーニングは7分で読み終わるコースとして用意しているものもあり、シフトの合間に受講してもらい、受講履歴がそのまま記録として残る形になっています。年に一度の研修機会として、記録の残し方に悩んでいる事業所には検討しやすい方法だと思います。

窓口を「使われるもの」にする工夫

制度として窓口を設けても、実際に相談が来ないまま何年も経つ事業所もあります。相談がないことが良い状態とは限らず、単に相談しづらい雰囲気があるだけかもしれません。

窓口を使われるものにするためには、研修の際に「こういう場合は相談してよい」という具体例を示すこと、相談したことで不利益がないと明言すること、そして相談後にどう対応が進むのかを職員に分かる形で伝えておくことが有効です。相談窓口の存在を知らせるだけでなく、使うイメージを持ってもらうことが大切になります。

また、利用者やその家族からのハラスメントについても、対応方針を職員に伝えておく必要があります。介護保険サービスの現場では、職員が一人で対応に困る場面も出てきますので、相談できる先があることを日頃から伝えておくと安心につながります。

まとめ

ハラスメント対策は、規程を作るだけでなく、研修の実施記録と、実際に使われる相談窓口の両方が揃って初めて機能します。運営指導では、窓口の有無だけでなく実施記録の中身が確認されることがあります。非常勤職員も含めた周知と、誰が何を学んだかが分かる記録を、日頃から整えておくことが実務上の備えになります。

出典・参考

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

▶ WAM NET(福祉・保健・医療の総合情報サイト)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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