スマホで記録・写真共有、介護現場の個人情報保護の線引き方

送迎の様子を家族に送っていいのか、現場で迷う場面

通所介護の送迎から戻ってきた職員が、利用者の笑顔をスマホで撮って、ご家族のグループLINEにそのまま送る。訪問リハビリの現場で、歩行訓練の様子を動画で撮って、次のスタッフへの申し送り代わりに個人のスマホグループへ共有する。こうした光景は、決して珍しいものではないと思います。

家族からすれば「今日も元気そうで安心した」と喜んでもらえますし、職員同士の申し送りとしても、文章で書くより写真や動画のほうが伝わりやすい場面はあります。ただ、これを「便利だから」という理由だけで続けていると、個人情報保護の観点からは危ういやり方になっている場合があります。管理者や教育担当の立場からすると、誰が何を、どこに、どれだけの期間保存しているのか把握できない状態が、いちばん困る状態だと思います。

なぜスマホでの共有が問題になるのか

問題は「便利な道具を使うこと」自体ではなく、事業所として管理できない経路に利用者の情報が流れてしまうことにあります。

職員個人のスマホで撮影した写真は、その職員のスマホの中に残ります。事業所のサーバーやクラウドではなく、個人の端末に利用者の顔写真や生活の様子が蓄積されていく状態です。その職員が退職したとき、スマホを機種変更したとき、あるいは紛失や盗難にあったとき、その写真がどこへ流れるかは、事業所側でコントロールできません。

家族へのLINE共有についても同じことが言えます。事業所として正式に案内している連絡手段ではなく、担当職員個人のアカウントから送られている場合、その職員が異動や退職をすれば連絡は途切れますし、家族側のスマホに残った写真がどう扱われるかも把握できません。写真に他の利用者が写り込んでいる場合は、さらに複雑です。同意をいただいているのは目の前のご家族だけで、写り込んだ別の利用者やご家族の同意は取れていない、ということが起こり得ます。

こうした状態は、法令上の義務を果たしていないというより、「事業所として管理できていない」ことそのものが問題です。運営指導で記録の管理体制を聞かれたときに、スマホでのやり取りが常態化していると答えられる事業所は、あまり多くないと思います。

線引きのルールをどう決めるか

線引きは、難しい理屈からではなく、次の三つの問いで整理すると考えやすくなります。誰が撮るか、どこに保存するか、誰に見せるか、です。

まず撮影は、事業所が用意した端末に限ると決めておくことをおすすめします。私物のスマホでの撮影を一律禁止にできない事業所もあると思いますが、その場合でも「撮影後は速やかに指定のフォルダに移し、端末には残さない」というルールを明文化しておくと、判断に迷う場面が減ります。

保存先については、クラウドサービスを使うにしても、事業所として契約したアカウントで管理し、個人のアカウントに紐づけないことが基本です。誰がいつアクセスしたか分かる状態にしておくと、後から確認が必要になったときにも対応しやすくなります。

家族への共有は、担当職員の個人アカウントではなく、事業所として決めた連絡手段に統一することをおすすめします。連絡帳アプリや、事業所名義のメールなど、方法は事業所の規模や体制によって異なりますが、「担当が変わっても連絡経路は変わらない」状態にしておくことが目的です。写り込みについても、複数の利用者が写る写真は共有しない、あるいは個別に同意を確認した範囲でのみ使う、というルールをあらかじめ決めておくと、現場での判断がぶれにくくなります。

こうしたルールは、決めただけでは浸透しません。特に新しく入った職員や、非常勤で出勤日数が少ない職員には、口頭での説明だけでは伝わりきらないことがあります。福ひろばラーニングのように、7分で読み終わるコースで個人情報保護の基本と写真・記録の扱いをまとめておくと、入職時や年度替わりのタイミングで、同じ内容を全員に届けやすくなります。受講の記録も残るので、「説明した・していない」の食い違いも起きにくくなります。

まとめ

スマホでの写真や記録の共有は、便利さゆえに個人の判断に任されがちですが、撮影・保存・共有のそれぞれで「事業所として管理できる経路か」を確認することが線引きの基本になります。ルールを決めたら、新人や非常勤も含めて全員に同じ内容が届く形で伝え、記録として残しておくことが、後々の安心につながります。

出典・参考

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

▶ WAM NET(福祉・保健・医療の総合情報サイト)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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