虐待防止委員会の回し方、開催して終わりにしない周知記録の残し方

委員会は開いているのに、現場が知らない

虐待防止委員会を毎月きちんと開催している事業所は少なくありません。議事録も作成していて、運営指導で提示を求められても困らない。それなのに、現場の職員に聞くと「そんな会議があるのは知っているけれど、何が決まったかは知らない」という答えが返ってくることがあります。

これは珍しい話ではなく、委員会と現場のあいだに壁ができている事業所によく見られる状態です。委員会の議事録は管理者と委員だけのものになっていて、そこで決まった注意点や再発防止策が、シフトに入っている職員まで届いていません。委員会を開くこと自体は制度上の義務として満たしていても、それが職員の行動を変えていなければ、虐待防止の仕組みとしては機能していないことになります。

運営指導では、委員会の開催実績だけでなく、決定事項がどう現場に伝わったかを確認されることがあります。議事録はあるのに周知の記録がない、という状態は、仕組みの半分しか回っていないと見られても仕方がありません。

議事録から周知記録までをひとつの流れにする

委員会運営を見直すときは、委員会の開催と現場への周知を別々の作業として扱わないことがポイントになります。委員会が終わった時点で、次にやることまで決めておく発想です。

具体的には、委員会の議事録に「誰に」「いつまでに」「どの方法で」周知するかを書く欄を設けておきます。全職員に伝えるのか、特定のユニットや担当者だけに伝えるのかで、周知の範囲は変わります。朝礼で口頭伝達するのか、回覧で確認印をもらうのか、研修の形で改めて受講してもらうのかも、内容の重さによって選び分けが必要です。

軽微な手順の確認であれば掲示や回覧で足りることもありますが、実際にヒヤリハットや事案の振り返りから再発防止策を決めた場合は、口頭伝達だけでは弱く、職員一人ひとりが内容を理解したことを確認できる形が望ましくなります。ここで、委員会の決定事項を短いコースとして読んでもらう方法を取り入れている事業所もあります。福ひろばラーニングは読むかたちのeラーニングで、7分で読み終わるコースとして委員会の決定事項や注意点をまとめておけば、忙しい職員でもすき間時間に受講でき、誰がいつ読んだかも記録として残せます。委員会の議事録と周知の記録をセットで管理する仕組みとしては扱いやすい方法です。

誰が確認したかを残す、で終わらせる

周知の記録で大事なのは、「伝えた」ことではなく「伝わった」ことを示せるかどうかです。回覧板にサインをもらう方法でも、受講記録を残す方法でも構いませんが、共通して必要なのは、対象者の一覧と、実際に確認した人・していない人が分かる形になっていることです。

委員会のたびに、前回決めたことの周知状況を確認する時間を数分でも取ると、記録の抜けに早く気づけます。周知が遅れている職員がいれば、次のシフトまでに声をかける、あるいは個別に短いコースを案内するといった対応につなげられます。ここを委員会の議題に組み込んでおくと、周知が委員会任せではなく、委員会と現場の双方の責任として動くようになります。

また、周知記録は一度作って終わりではなく、次の委員会の資料として使い回せる形にしておくと負担が減ります。議事録のフォーマットに「前回の周知状況」という欄を固定で設けておけば、毎回ゼロから確認方法を考える必要がなくなります。新しく委員になった職員や教育担当者が変わった場合でも、フォーマットを見れば何を確認すべきかが分かるので、担当者の異動に左右されにくい仕組みになります。

委員会の議題を絞って、記録を軽くする

委員会を開いても現場に伝わらない背景には、議題が多すぎて決定事項がぼやけてしまうことも関係しています。ヒヤリハットの共有、指針の見直し、研修計画の確認などを一度に詰め込むと、議事録は長くなりますが、結局何を周知すればよいのか分かりにくくなります。

委員会の時間を区切って、その回で現場に伝えるべきことをひとつかふたつに絞る運営の仕方もあります。決定事項が少なければ、周知の方法も選びやすく、記録も簡潔にまとまります。委員会そのものの回数を増やすことより、一回あたりの決定事項を絞り込み、周知までを確実に終わらせることのほうが、結果として現場に定着しやすくなります。

事業所の規模やサービス種別によって、委員会に求められる開催頻度や構成員は異なります。自治体によって運営指導での確認の視点も変わってくるため、判断に迷う部分は指定権者に確認しながら、自事業所に合った運営の形を作っていくことになります。

まとめ

虐待防止委員会は、開催実績だけでなく、決定事項が現場に伝わり、職員一人ひとりが確認した記録まで残ってはじめて機能します。議事録に周知の方法と対象者を書き込み、次回の委員会で周知状況を確認する流れを作ると、担当者が変わっても仕組みが途切れにくくなります。委員会の議題を絞ることも、周知を確実にするための地味ですが有効な工夫です。

出典・参考

▶ 高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果(厚生労働省)

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

▶ WAM NET(福祉・保健・医療の総合情報サイト)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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