障がい福祉の意思決定支援、ガイドラインは何から日々に落とす?
本人の意思確認が「形だけ」になっていないか
個別支援計画の会議で、本人の意向欄に毎回同じような言葉が並んでいる、という事業所もあるのではないでしょうか。「落ち着いて過ごしたい」「みんなと仲良くしたい」といった定型文が続き、実際の支援内容は職員やご家族の判断で決まっている。本人に聞いてはいるけれど、答えやすい聞き方をしていなかったり、答えにくい状態のときに一度だけ聞いて終わっていたりすることもあります。
障がい福祉の意思決定支援ガイドラインは、こうした状態に歯止めをかけるために作られたものです。本人の意思を確認して終わりではなく、意思形成・意思表明・意思実現という段階を踏んで支援すること、本人が自分で決められるよう情報提供や環境調整を行うこと、どうしても難しい場合に初めて代行決定を検討することが基本的な考え方として示されています。知識として知っている方は多いと思いますが、日々の記録や会議の進め方にどう落とすかで悩む事業所も少なくありません。
ガイドラインの考え方を個別支援計画に落とす
個別支援計画の5領域を整理するとき、本人の意向は「健康・生活」「人間関係・社会生活」などの各領域に沿って形式的に埋めるだけになりがちです。ここにガイドラインの視点を入れるなら、まず意向を聞くタイミングと場所を見直すことから始められます。会議の場で急に聞かれても答えにくい方もいますし、普段と違う部屋だと緊張してしまう方もいます。日中活動の記録や生活介護の場面記録の中に、本人の表情や発言、選んだ行動の記録を積み重ねておくと、会議の場で聞くだけでは分からない意思の手がかりになります。
意思表明が言葉で難しい方については、選択肢を示して選んでもらう、写真や絵カードを使う、普段の様子から読み取るなど、本人に合った方法をあらかじめ検討しておくことも大切です。これは特別なことではなく、児童発達支援でも成人の生活介護でも共通する考え方です。個別支援計画の様式に「意思表明の方法」という欄を設けている事業所もあり、様式の工夫だけでも意識が変わることがあります。
意思決定支援の考え方を理解する機会として、福ひろばラーニングでは障がい福祉の制度や支援に関するコースを7分で読み終わる形で用意しています。会議の前に該当のコースを読んでから臨むようにすると、職員間で前提となる考え方がそろいやすくなります。
会議や記録での落とし方を具体的に決めておく
意思決定支援を日々の支援に組み込むには、会議の進め方を少し変えるだけでも効果があります。例えば、支援方針を決める前に「本人はどう感じているか」「本人に確認した結果どうだったか」を必ず発言する時間を設ける、議事録のフォーマットに本人の意思確認欄を独立して作る、といった方法です。強度行動障害のある方への対応など、安全面の判断が優先されやすい場面ほど、本人の意思がどう扱われたかを記録に残しておくことが後から振り返る材料になります。
また、意思決定支援は一度の会議で完結するものではありません。本人の状態や環境の変化によって意思も変わるため、定期的な見直しのタイミングを個別支援計画のモニタリングに合わせて設定しておくと運用しやすくなります。サービス等利用計画との整合性を取る際にも、相談支援専門員に対して本人の意思確認の経過を共有できるようにしておくと、計画間のずれが起きにくくなります。
ご家族の意向と本人の意思が異なる場合の扱いも、あらかじめ事業所内で考え方をそろえておくとよい点です。ガイドラインでは本人の意思を尊重することが基本ですが、安全や生活への影響が大きい場合はどう調整するか、誰が最終的な判断に関わるかを事前に決めておくことで、現場の職員が一人で抱え込む状況を減らせます。
まとめ
意思決定支援ガイドラインの考え方は、本人の意思を形だけ確認するのではなく、形成・表明・実現の各段階を支援することにあります。個別支援計画の様式や日々の記録、会議の進め方に少しずつ落とし込むことで、無理なく運用できる仕組みに近づきます。ご家族の意向との調整方法や意思表明の確認手段を事前に決めておくことも、現場の負担を減らす一歩になります。
出典・参考
▶ 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について(厚生労働省)
▶ 障害福祉サービス事業所等における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修動画(厚生労働省)
※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。
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