複数事業所の研修管理、拠点ごとの実施状況を本部で把握する方法

通所介護を複数拠点で運営している法人では、四半期ごとに各事業所から研修の実施報告を集めている、という管理者・教育担当の方は多いと思います。ところが集まってくる報告書の形式がまちまちで、ある事業所は参加者名簿と資料まで添付されているのに、別の事業所は「感染症研修実施済み」の一文だけ、ということが起こります。実施した研修の中身も、拠点ごとに担当者が独自に選んでいるため、同じ法人でありながら受けている内容にばらつきが出ます。本部としてはこの状態を放置すると、運営指導で研修記録の提出を求められたときに、事業所ごとに対応の差が出てしまいます。

拠点ごとに実施状況がばらつく理由

まず整理しておきたいのは、なぜばらつきが生まれるのかです。多くの場合、原因は担当者の熱意ではなく仕組みの側にあります。

一つは、研修の企画から記録までを各事業所の管理者や生活相談員が個人の判断で担っていることです。忙しい時期に後回しになったり、担当者が異動すると引き継ぎが不十分なまま止まったりします。もう一つは、記録のフォーマットが統一されていないことです。参加者名簿だけの事業所、感想文まで残す事業所、口頭確認だけで済ませる事業所と、様式が違えば本部が横並びで比較できません。

さらに、非常勤・パート職員の出勤日が事業所ごとに違うため、同じ研修を実施していても受講できた人数に差が出ることもあります。この点は事業所側の努力だけでは埋めきれない部分で、本部が仕組みとして支える必要があります。

こうした差は、悪意や怠慢というより、本部が「何を、どの粒度で報告してほしいか」を明確に示していないことが背景にあることが多いです。

本部が把握すべき項目と集め方

本部が全事業所の研修状況を把握するときに必要なのは、詳細な内容の統一ではなく、比較できる最低限の項目を揃えることです。具体的には次のような項目が挙げられます。

  • 実施した研修のテーマと実施日
  • 対象者(常勤・非常勤を含む全職員か、一部職員か)
  • 受講者数と対象者数(未受講者が誰かわかる形)
  • 記録の保管場所(紙・データいずれか)
  • 次回予定しているテーマ

この5項目だけでも、拠点間の差はかなり見えるようになります。たとえば受講者数と対象者数を並べれば、常勤は全員受けているのに非常勤の受講率が低い事業所がひと目でわかります。これは非常勤・パート職員の出勤日調整という別の課題につながる話ですが、まず「見える化」できていることが前提になります。

集め方としては、四半期ごとの報告書に加えて、年度末に年間の一覧表を本部側でまとめ直す方法が現実的です。事業所側に細かい様式変更を求めるより、本部が受け取った報告を同じフォーマットに転記して比較する方が、現場の負担を増やさずに済みます。

記録の粒度を揃える工夫

項目を揃えても、記録の「粒度」がばらつくと比較は難しくなります。ある事業所は研修の要点をまとめたレジュメを残し、別の事業所は「実施した」という一行だけ、という状態では、運営指導で内容の説明を求められたときに対応できる事業所とできない事業所が出てしまいます。

粒度を揃える工夫として有効なのは、全事業所が同じ教材を使って研修を実施できるようにすることです。事業所ごとに担当者が資料を作ると、内容の深さも記録の残し方も担当者の力量に左右されます。同じ教材であれば、受講後に残る記録の形式も自然と揃いやすくなります。

このあたりで、福ひろばラーニングのような、読むかたちのeラーニングを併用している法人もあります。7分で読み終わるコースを各拠点の職員が同じ内容で受講し、受講履歴が自動的に残る仕組みを使えば、本部は各事業所から報告を待たなくても、誰がいつ何を受講したかを直接確認できます。事業所側も研修の企画や資料作りにかける時間を減らせるので、拠点による実施状況のばらつきそのものが起きにくくなります。もちろん、事業所独自の事例検討やOJTは引き続き各拠点で行う必要がありますが、共通して受けてほしい内容についてはこうした仕組みで底上げしておくと、本部の把握作業がかなり軽くなります。

まとめ

複数事業所の研修管理は、内容を統一することより、比較できる記録の項目と粒度を揃えることが本部の役割になります。実施日・対象者・受講者数・記録の保管場所を最低限揃えれば、拠点ごとの差は見えるようになります。共通して受けてほしい内容は同じ教材で受講できるようにしておくと、本部も現場も負担が軽くなります。

出典・参考

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

▶ WAM NET(福祉・保健・医療の総合情報サイト)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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