日本語学習の機会の提供、誰が担う?記録は何を残す?

場面:入国後、誰が日本語学習を案内するか決まっていない

特定技能1号の外国人材が配属されて1〜2か月が経ったころ、「日本語の勉強はどうしているか」という話題が出ることがあるのではないでしょうか。受け入れ事業所の管理者は「登録支援機関が何かやってくれているはず」と思い、登録支援機関の担当者は「受け入れ機関から特に依頼がないので様子を見ている」と考えている。こうしたすれ違いは、支援計画のどこまでを誰が担うかが曖昧なまま走り出した場合に起こりがちです。

日本語学習の機会の提供は、1号特定技能外国人支援計画に必ず書かなければならない義務的支援の一つです。任意ではなく、計画に落とし込み、実施し、記録する必要があります。まずはこの「最低限」を確認しておきます。

義務的支援として最低限すべき3つの選択肢

義務的支援としての日本語学習の機会の提供は、本人の希望に基づいて次のいずれかを行うこととされています。

1つ目は、地域の日本語教室や認定日本語教育機関等の入学案内を提供し、必要に応じて同行して入学手続きを補助することです。2つ目は、自習用の日本語教材やオンライン日本語講座の情報を提供し、必要に応じて教材の入手や利用契約の手続きを補助することです。3つ目は、本人と合意のうえで登録日本語教員等と契約し、日本語講習の機会を設けることです。

どれか一つを選べばよく、すべてを用意する必要はありません。ただし「情報提供して終わり」ではなく、本人が希望すれば入学や契約の手続きまで補助する姿勢が求められています。支援計画は、本人が働く事業所と住む場所の市区町村が行う共生施策を確認して作成し、確認した市区町村名・確認日・確認方法を記入する形になっています。支援要領には「日本語学習の相談があれば市の日本語教室を案内する」という記載例が示されており、まずは自分の地域にどんな教室があるかを調べておくことが実務の出発点になります。

情報提供、入学や利用の手続きの補助、登録日本語教員等の選定といった、義務的支援として行う各種支援にかかる費用は、特定技能所属機関等が負担します。本人に過度な学習費用が生じないよう留意することも求められていますので、教材費や講習の契約料を本人負担にしてしまわないよう、費用の扱いは事前に確認しておく必要があります。

記録に残すこと、誰が担うか

支援の実施状況の記録には、少なくとも本人の氏名・生年月日・国籍(地域)・性別・在留カード番号、実施内容(情報提供の内容)、実施方法、実施担当者(委託先の講師を含む)の氏名と所属を書きます。登録支援機関が担当した場合は役職も記載します。「案内した」だけでなく、いつ・誰が・どの方法で・どんな内容を伝えたかまで残しておくことが、あとから振り返る際にも役立ちます。

誰が担うかは、委託の範囲で決まります。登録支援機関に支援計画の全部の実施を委託していれば、日本語学習の支援も登録支援機関が行います。一部だけ委託する場合は、どこまで委託するかを支援計画に明示しておく必要があります。登録支援機関は受託した支援の実施そのものを他者に再委託できませんが、通訳など必要な範囲の補助を頼むことは可能です。この線引きが曖昧だと、先ほどの場面のように「どちらがやるか」が宙に浮いたままになってしまいます。

支援の状況に係る文書は、特定技能雇用契約の終了の日から1年以上、支援を行う事業所に備えて置きます。登録支援機関も同様です。書面の代わりに電磁的記録で作成・保存することもできます。支援の実施状況は年1回の定期届出で報告する決まりで、特定技能所属機関は毎年4月1日から5月31日までに、前年度(4月から翌年3月まで)の分を届け出ます。支援を全部委託している場合は、登録支援機関が所属機関を経由して、所属機関と連名で届け出ることになります。この時期になって慌てないよう、日々の実施記録を蓄積しておくことが結局は近道です。

継続的な学習機会と任意的支援の違い

日本語の習得は一度の案内で進むものではなく、継続的な学習が必要とされています。習得状況に応じて、適切で継続的な学習の機会を提供し続けることが求められており、参考として文化庁の「つながるひろがる にほんごでのくらし(つなひろ)」や、日本語能力の自己評価ツール「にほんごチェック!」などが示されています。

義務的支援を超えて、支援責任者・支援担当者などの職員が日本語指導・講習を企画・運営したり、日本語能力試験の受験支援や資格取得者への優遇、入学金・月謝・教材費・日本語教員との契約料などを機関が負担したりすることは、任意的支援に位置づけられます。こうした上乗せは必須ではありませんが、本人の定着や成長を後押しする材料として検討している事業所もあるのではないでしょうか。

なお、福ひろばラーニングの介護職初級の15コースは、英語・ベトナム語・インドネシア語・ミャンマー語・中国語で読める7分で読み終わるコースとして用意しています。これは義務的支援である日本語学習の機会の提供に代わるものではなく、業務理解を助ける教材として受講いただくものです。義務的支援としての日本語学習は、あくまで上記の3つの選択肢の中から用意する必要があります。

まとめ

日本語学習の機会の提供は、本人の希望に基づき「教室案内」「自習教材の情報提供」「日本語教員との契約」のいずれかを行う義務的支援です。費用は機関側が負担し、情報提供から記録、定期届出までを誰が担うかは委託の範囲で明確にしておく必要があります。委託の線引きを支援計画に書き込み、実施記録を日々残しておくことが、年1回の届出と1年以上の文書保存を無理なく乗り切る土台になります。

出典・参考

▶ 特定技能運用要領(出入国在留管理庁)

▶ 特定技能制度(出入国在留管理庁)

▶ 介護分野における特定技能外国人の受入れについて(厚生労働省)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

──────────

📚 福ひろばラーニングは、介護・障がい福祉のための研修eラーニングです。法定研修の実施と記録を1か所にまとめ、年間研修計画書と実施記録は管理画面からそのまま印刷できます。1人月220円(税込)。

▶ 実際のコースを無料で体験する

▶ 外国人スタッフ向けの多言語のご案内

▶ 無料で相談する

──────────

この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

会社概要を見る →
← ブログ一覧へ