BCP机上訓練の進め方、1回2時間で記録まで残す方法

BCPは作ったけれど、訓練は手つかずという事業所へ

BCP(業務継続計画)を策定し、ファイルに綴じて終わっている事業所は少なくありません。策定は義務化されたものの、訓練まで含めてどう進めればよいか、具体的なイメージが湧かないという声をよく聞きます。

実地訓練は利用者の安全確保や職員のシフト調整が必要で、ハードルが高いのも事実です。一方で机上訓練であれば、会議室に集まって2時間ほど話し合うだけで実施できます。実地訓練の前段階として、まず机上訓練から始めるのは現実的な進め方です。

ただし「集まって話した」だけでは、運営指導で実施記録を求められたときに説明がつきません。何を目的に、誰が参加し、どんなシナリオで、どんな課題が出たのかを残しておく必要があります。

やりがちな失敗と、2時間の進め方

机上訓練でよくあるのは、BCPの本文を読み上げるだけで終わってしまうパターンです。これでは訓練というより読み合わせであり、実際に災害や感染症が発生したときに動けるかどうかは検証できません。

机上訓練の目的は、BCPに書かれた手順を、具体的な状況に当てはめて動かしてみることです。進め方の一例を挙げます。

最初の15分は目的の共有です。今回の訓練が地震を想定するのか、感染症のクラスター発生を想定するのか、テーマを絞ります。両方を一度にやろうとすると散漫になるため、1回につき1テーマが現実的です。

次の20分で、BCPの該当箇所を確認します。初動対応、職員の参集基準、利用者・ご家族への連絡手順などを、担当者がそれぞれ音読する形でも構いません。ここで曖昧な表現や、担当者名が空欄のままの箇所が見つかることがあります。

ここからの60分がシナリオ検討です。「平日の午後、職員が3名しかいない状況で震度6弱の地震が発生した」といった具体的な条件を設定し、参加者に順番に対応を答えてもらいます。誰が利用者の安否確認をするか、通所介護であれば送迎中の職員との連絡手段は何か、記録や個人情報の管理が必要な書類はどう持ち出すか、といった点を一つずつ確認していきます。

訪問リハビリを行っている事業所であれば、訪問中の職員と事業所との連絡手段、訪問先での被災時の退避判断を誰がするかも検討項目になります。サービス種別によって想定すべき場面は異なるため、通所と訪問のそれぞれでシナリオを分けて考えると実務に近づきます。

残りの25分で振り返りを行います。シナリオ検討の中で「ここは決まっていなかった」「連絡先が古いままだった」という課題を出し合い、誰がいつまでに見直すかを決めます。訓練はBCPの不備を見つける場でもあるため、課題が出ること自体は問題ではありません。むしろ課題が一つも出ない回のほうが、形だけの訓練になっていないか注意が必要です。

記録に残す項目

訓練を実施したあと、記録に残しておくべき項目は次のとおりです。

  • 実施日時と所要時間
  • 参加者の氏名と職種
  • 想定したシナリオ(災害の種類、発生時間帯、人員状況など)
  • BCPのどの章・項目を確認したか
  • シナリオ検討で出た質疑応答の概要
  • 見つかった課題と、今後の対応予定(担当者・期限)
  • 次回訓練の予定時期

ここで大事なのは「実施した事実」だけでなく「何を検証し、何が課題として残ったか」まで書くことです。運営指導では、訓練の有無だけでなく、訓練を通じてBCPを見直す仕組みがあるかどうかを確認されることがあります。課題を次回の修正につなげた記録があれば、形式的な訓練ではないことの説明材料になります。

参加者の理解度にばらつきがある場合は、訓練前にBCPの基本的な考え方を全員で揃えておくと、シナリオ検討がスムーズに進みます。福ひろばラーニングには7分で読み終わるコースがあり、訓練前の予習として職員に受講してもらうと、当日の話し合いに充てられる時間が増えます。読むかたちなので、シフトの合間に各自のタイミングで進められる点も使いやすいところです。

まとめ

机上訓練は、BCPの本文を読み上げるだけでなく、具体的なシナリオを設定して対応を検討する場にすることで初めて意味を持ちます。1回2時間という枠の中でも、目的共有・内容確認・シナリオ検討・振り返りの流れを作れば十分に実施できます。記録には実施した事実だけでなく、見つかった課題とその後の対応まで残しておくと、次の訓練や運営指導の場でも役に立ちます。

出典・参考

▶ 介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修資料・動画(厚生労働省)

▶ ひな形(例示入り)を活用したBCP(業務継続計画)の作り方(厚生労働省)

▶ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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