障がい福祉の意思決定支援、ガイドラインを日々の場面にどう落とすか

「決めるのを手伝う」場面は毎日ある

昼食のメニューを選ぶ、外出先を決める、活動の時間に何をするか選ぶ。こうした場面は、生活介護でも就労支援でも児童発達支援でも、1日に何度も出てきます。意思決定支援というと大掛かりな取り組みに聞こえますが、実際には毎日の小さな場面の積み重ねです。

問題は、こうした場面で職員がどこまで本人の意思を確認し、どこから職員の判断で進めているか、その境目が曖昧になりやすいことです。忙しい時間帯ほど「いつもこうしているから」で進めてしまい、本人に聞く手順が抜け落ちます。悪気があるわけではなく、業務の流れの中で自然にそうなってしまうのが実情だと思います。

ガイドラインが示しているのは、こうした場面を特別扱いせず、日常の支援の中に意思決定支援の視点を組み込むという考え方です。大きな決定(入所や進路など)だけでなく、日々の小さな選択の積み重ねが本人の生活の質につながる、という前提に立っています。

ガイドラインの考え方を3つに整理する

意思決定支援ガイドラインが示す考え方は、現場で使う言葉に置き換えるとおおむね次の3つに整理できます。

1つ目は、本人には意思決定をする力があるという前提に立つことです。障害の種別や程度にかかわらず、まず「本人はどう思っているか」を起点にします。できないと決めつけず、どう伝えれば本人が選びやすいかを工夫する発想です。

2つ目は、本人の意思をくみ取るプロセスを丁寧にたどることです。選択肢を示す、時間をかける、表情や行動からも意思を読み取る。言葉でのやり取りが難しい方であっても、意思決定の機会そのものを省略しないという姿勢が求められます。

3つ目は、やむを得ず職員が代わりに判断する場合でも、その理由と経緯を残すことです。本人の意思確認が難しかった場合に職員や家族がどう考えて決めたのか、プロセスを言語化しておくことが、後から振り返るときの拠り所になります。

この3つは特別な技術というより、支援の手順に「本人に聞く」という一手間を入れるかどうかの違いです。現場の負担感を減らすには、この一手間をどこに組み込むかを事業所ごとに決めておくことが近道になります。

記録に残すときの視点

意思決定支援を記録に残すときに迷うのが、「本人の意思」と「職員の判断」をどう書き分けるかです。個別支援計画や支援記録の中で、本人がどう言ったか、どんな様子だったかという事実と、それを受けて職員がどう対応したかという行動を分けて書くと、後から見返したときに意思決定のプロセスが追いやすくなります。

逆によくあるのが、「本人の希望により〇〇した」とだけ書かれていて、実際にどんなやり取りがあったのかが記録から読み取れないケースです。運営指導でこの部分を確認されることもありますので、選択肢の示し方や確認の仕方まで含めて記録しておくと安心です。

代弁と代行決定の違いも、記録の中で意識しておきたいポイントです。代弁は本人の意思を職員が言葉にして伝える関わり、代行決定は本人に代わって職員が判断する関わりです。どちらが悪いということではなく、今どちらの関わりをしているかを職員自身が自覚していることが大切です。

事業所内でどう共有するか

こうした考え方は、サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者だけが理解していても、現場には浸透しません。日々の支援に入る職員全員が同じ前提を持っていないと、場面ごとの対応にばらつきが出てしまいます。

会議やカンファレンスの中で、意思決定支援の視点から支援場面を振り返る時間を設けている事業所もあります。特定の支援を取り上げて、「本人の意思はどう確認したか」「代行決定になった部分はどこか」を言葉にしてみると、普段は流していた場面の見え方が変わってきます。

研修の機会としては、意思決定支援の基本的な考え方を職員間で揃えるために、短時間で読めるものを活用するのも一つの方法です。福ひろばラーニングには、意思決定支援の考え方を整理した7分で読み終わるコースがあり、新人からベテランまで同じ内容を受講することで、職員間の理解のずれを減らすのに使われています。会議の前後に読んでおくと、話し合いの土台が揃いやすくなります。

まとめ

意思決定支援は、入所や進路といった大きな場面だけでなく、昼食や活動を選ぶといった日々の小さな場面の積み重ねで成り立っています。ガイドラインの考え方を「本人に聞く」「プロセスを残す」「代弁と代行決定を区別する」という3点に落とし込み、記録と会議の中で職員全員が同じ前提を共有できる仕組みを作ることが、日々の支援の質を底上げしていきます。

出典・参考

▶ 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について(厚生労働省)

▶ 障害福祉サービス事業所等における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修動画(厚生労働省)

▶ 福祉・介護職員の処遇改善(障害福祉・厚生労働省)

※制度の取り扱いは改定や自治体の運用で変わることがあります。実際のご対応は指定権者にご確認ください。

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この記事の監修
監修者 塙 啓之
塙 啓之はなわ ひろゆき
株式会社はなひろ 代表取締役

介護業界で25年以上、現場・介護施設の管理者・ケアマネジャー(介護支援専門員)を経験。2013年に株式会社はなひろを設立し、福島県でデイサービスなどの介護事業所を運営。一般社団法人 全国介護事業者連盟 福島県支部 副支部長。現場と経営の両方の視点から、福ひろばラーニングの全コース・記事を監修しています。

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